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金聖響 指揮
ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調 作品67 《運命》 
 (2004年リリース WPZS-30005/6)


<Disc-1>
ベートーヴェン
  交響曲第5番 ハ短調 作品67 《運命》
    第1楽章 Allegro con brio
    第2楽章 Andante con morto
   第3楽章 Allegro
   第4楽章 Allegro
 《エグモント》 作品84 序曲

指揮:金聖響
演奏:オーケストラ・アンサンブル金沢

<Disc-2>
《運命》との対話
  リハーサル風景&インタビューにより構成されたドキュメンタリー映像作品
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 今日、とんでもない指揮者に出会ってしまいました。

 ベートーヴェンの《運命》と言えば、誰もが「ジャジャジャジャーン」と歌えるという、世界一有名な交響曲です。
 私も、生で聴いたことはもちろんのこと、CDも2枚持っていて、聴いたらすぐに「あ、これ2楽章」とか「ここは4楽章」といった具合にわかるほど、よく耳にしている曲です。

 なのに。
 この聖響さんの《運命》は……。

 正直、聴いた時に、「これって、こんな曲だったっけ?」と思いました。
 まず、聞き流すということができないのです。もう、ぐいぐい引き寄せられる感じで。 もう、夢中になって聴いてしまいました。
 そして、今まで何の気なしに聞いていて、耳に入ってはいても認識していなかったようなパートがとてもクリアに聞こえてきて、「あれ、こんな所でこんな楽器が…」と気づかされる、という。
 例えば、第4楽章のピッコロ。このCDで聴くまで、4楽章全体にわたってピッコロが活躍しているとは知りませんでした。

 全体的にとてもメリハリが効いていて、パワフルで。ピアノはちゃんとピアノの音量なのですが、フォルテはフォルティッシモに、フォルティッシモはフォルティシシモくらいの音量に聴こえます。とても、40人ほどで演奏しているとは思えない音量です。
 スラーとスタッカート、何もついていない音符など、その違いがはっきりとわかる演奏で。
 また、ただ8分音符を刻むだけの場所でも、和音の変わり目にちょっとしたアクセントをつけたり、ほんの少しクレッシェンドしたり、ディミニュエンドしたり……といった、今まで聴いたことのない抑揚がついている箇所がいくつもあって。
 たちまち、大好きな1枚になってしまいました。

 でも、これは決して真新しさを追求してのことではない、というのが聖響さんのすごい所なのでしょう。彼は「ピリオド・アプローチ」といって、作曲家と作品…つまり、作曲者の意図を現代に伝えてくれるスコアに立ち返り、スコアに忠実に演奏する、ということを実践しておられるそうで。
 この《運命》も、スコアを研究し、書かれている通りに(CDに付属しているドキュメンタリーDVDでも、「書かれている通りにやりましょう」と聖響さんが指示するシーンがありました)演奏した結果だ、という。

 だからなのか、余計なものを全てそぎ落とした、とてもシンプルな曲になっているような気がしました。

 テンポの速さ、という点では小澤征爾さんとサイトウキネンのCDの方が、まだもう少し速いのですけれど。
 でも、どちらかと言えば速めのテンポで展開される1楽章は「ジャジャジャジャーン」が畳み掛けてくるようで、「ソドシトレララソ」の旋律も次々に畳み掛けるように展開されていて、まさに「運命の荒波が押し寄せる」といった感じに聞こえました。
 2楽章は優雅なメロディの中にも力強さがあって。
 3楽章で、一度音量が落ちてからノンストップで4楽章に駆け上がり、4楽章の冒頭を聴いた瞬間は、押さえつけられていたものが一気に弾けるような爽快感を覚えました。
 本当に、あんな爽快感のある《運命》の4楽章を聴いたのは初めてではないか、と。

 そして、ドキュメンタリーの中でこんな一幕がありました。
 《運命》という曲の偉大さに圧倒され、レコーディングを成功させなければ、というプレッシャーを背負って、1日目のレコーディングがギクシャクしてしまった聖響さんに、オーケストラ・アンサンブル金沢のコンマスがこう話したそうです。
 ……と言いましても、コンマスさんは多分英語で話されて、それを聖響さんが翻訳して、ご自分の言葉で語られたのですが……。

「相手はデカいんだから。もうね、気にしない。とにかく音楽が好き、ベートーヴェンが大好き。それだけでええんちゃうん」

 その言葉で吹っ切れて、2日目からは心機一転でレコーディングに臨んだそうです。
 そういうドキュメンタリーを拝見したからでしょうか。
 特に4楽章でそう感じたのですが、聴いていてひしひしと伝わってくるのです。
「俺、ベートーヴェン好きやねん! この曲メッチャ好きやねん! この曲振るの、メッチャ楽しい!」
 と聖響さんが叫んでいるような気がするのです。
 そして、それをオーケストラも受け止めて、楽しんで演奏しているような気がするのです。
 私がこのCDを聞き流せない理由の一つは、ここにあるのではないか、と。
 もちろん、ドキュメンタリーDVDを見て、聖響さんの指揮とかっこよさに一目惚れした、というのも理由の一つなのですけど(笑)。

 ドキュメンタリーDVDは、初回限定盤にだけついているのですが、これはぜひ、DVDと合わせて楽しんでいただきたいです。
 DVDで、リハーサルで聖響さんが振っているところを見ているからなのでしょうか。 CDを聴いていると、聖響さんが振っている姿が目に浮かぶようでした。

 でもなぁ、これだけ満足した《運命》を聴いてしまうと……。
 この先、他の人が指揮する《運命》を聴いたら「なんか物足りない」と思ってしまうのではないか、とちょっとだけ不安になってしまいました(苦笑)。

 私が持っている《運命》は聖響さんが3枚目。
 前の2枚は、1枚は話にも出てきた小澤征爾さんで、もう1枚はカラヤン指揮です。
 でも、今のところ、この聖響さんが一番好きです。
 このレコーディングの時、聖響さんは34歳。この先、指揮者としてもっと経験を積んでいって、また同じ曲を振ることになったとしたら。その時はどんな音になるんだろう?と、とても楽しみです。

 また、同時収録されている「エグモント序曲」も素晴らしいです。
 曲全体としては、《運命》ととてもよく似ています。暗→明へと駆け抜けて、“歓喜の象徴”と言われるピッコロが高らかに鳴り響く。あの爽快感はたまりません。
 そして、荘厳でゆったりとした旋律が終わって、静かになった所で現れるヴァイオリンのメロディ。
 「ラ♭ーシ♭ラ♭ソ♭ファファ」と鳴り響くその音の、なんと綺麗なこと!
 ヴァイオリンからクラリネット、フルート、オーボエへと受け渡されていく辺りがとても綺麗で、「ずっとこの音だけを聴いていたい!」と思うほど、陶酔してしまいます。

 《運命》も《エグモント 序曲》も。
 どちらも「こんな曲だったんだ!」と目からウロコで、爽快感があって、聴いていてとても気持ちのいい演奏でした。

(2005.5.20 「結月堂」Musicページより 一部加筆・修正)
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結月秋絵

Author:結月秋絵
ようこそお越し下さいました(礼)
音楽の原点はG-CLEF。
好きな指揮者は金聖響さん、佐渡裕さん、下野竜也さん。
好きなヴァイオリニストは落合徹也さん、古澤巌さん、神奈川フィルのソロ・コンマス石田泰尚さん。
好きなピアニストは榊原大さん。
好きなチェリストは柏木広樹さん、ヨーヨー・マさん。
などなど、挙げ始めるときりが無いです(笑)
ピアノ、パーカッション(吹奏楽部にて)、ヴァイオリンの楽器経験があります。
ちなみに、この写真は倉敷市民会館のステージにて。中学時代の定位置(=鍵盤楽器系パーカッション)からの隠し撮りです(爆)

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