2010/04/23 23:32:23
私は小さい頃からピアノを習っていたこともあって、クラシック音楽には幼少の頃から親しんできました。
ですが、食わず嫌いな作曲家がおりました。
それが。
グスタフ・マーラー
マーラーと言えば、交響曲がやたら長くて途中で退屈しちゃうし、音量の差が激しすぎてCDで聴くには向かないし。
なんか、イヤ。
ということで、ずっと敬遠してきたんです。それこそ、数年ではきかないほどの長い間。
でも数年前、ちょっとしたきっかけで「あら、面白そう」と興味を持って聴いてみたら、これが意外に面白くて。
凄いじゃん、マーラー!
と印象が一変した数ヶ月後でした。
金聖響さんのファンになったのは(笑)
というワケで、前置きが長くなりましたが、2010年~2011年。マーラーの生誕150年と没後100年が立て続けにやってくるマーラー・イヤーの2年間。聖響さんと神奈川フィルが「マーラーがっつり定期演奏会」をやる、ということで聴いてきました。
-------------------------------
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第262回定期演奏会
マーラー作曲:交響曲第3番 二短調
指揮:金聖響
メゾ・ソプラノ:波田野睦美
合唱:神奈川フィル合唱団
合唱団音楽監督:近藤政伸
児童合唱:小田原少年少女合唱隊
代表・指揮:桑原妙子
ソロ・コンサートマスター:石田泰尚
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
みなとみらいホール 大ホール 19:00~
-------------------------------
昨年、神奈川フィルさんから2010年度の定期演奏会のご案内をいただいた時から、どんな演奏になるんだろう?と楽しみにしておりました。
そして今年は定期会員になったので(フェイバリット会員なので、5回限定ですけど。……その5回が全て聖響さん指揮なのは、もちろんお約束です;)、ゲネプロ見学の権利を得たわけでありまして。当然、行使致しました♪
ゲネプロなので、途中で飛ばしつつ、気になるところは繰り返しつつ、指示を出しつつ……という感じだったのですが。
そのゲネプロを聴いたときから、かなりヤバかったんですよ。
今にも泣きそうになってて(笑)
これを、高い集中力を持って本気モードで演奏する本番で聴いたら、とんでもなく凄いことになるんじゃないか、と。
で、その本番が。。。
本気でヤバかったです(笑)
今日の定期演奏会は、プレトークなし。
いきなりの本番でした。
聖響さんはやはり、燕尾服でのご登場。そして、大好きな大河ドラマの福山龍馬を意識して伸ばしておられるのか、2月に拝見した時から更に髪が伸びてました。
このマーラーの第3番は、かなり大がかりな編成になっております。
ティンパニも2セット、シンバルも2組で打楽器がズラリ。舞台裏にもポストホルンさんや打楽器さんが待機。メゾ・ソプラノさんに女声の合唱団に、途中から少年少女合唱団も加わって、オケも大編成。
あっちからもこっちからも音が聞こえてくるので、マーラーを聴くときはステージ裏じゃなくて1階席で聴くべきだろう、と思いましたので、久しぶりに(←…;)1階席に降りました。それでも、取れた席が結構前の方でド真ん中だったもので、指揮者&オケにかぶりつき(笑) 久しぶりに聖響さんの後ろ姿を下から見上げました。
で、まずは第1楽章 力強く、決然と。
プログラムによれば「岩山が私に語ること。牧神の目覚め」ということで、冒頭から牧神パーンを呼び覚ますホルンの音が鳴り響きます。8本のホルンが同時に同じ旋律を吹く、というだけでもかなり迫力があります。
かと思えば、いきなりバスドラムが1台だけ、客席で少しでも物音が立てば音がかき消されてしまうほどの小さな音でリズムを刻む、何とも言えない張りつめた空気が漂って、低音が不穏な空気を漂わせて……と、目まぐるしく曲が展開していきます。
そして流れてくる、トロンボーンの美しいメロディ。運命の動機を思わせる音形が続く中で鳴り響くメロディは、プログラム的に言えばパーンが葦笛で奏でるメロディなのかもしれませんが。聴いていると、抗いようのない厳しい運命に立ち向かう人に向けて、強さを合わせ持った優しさで語りかけるようにも聞こえました。
そして、この楽章からすでに炸裂する石田氏のソロの音色は、さながら天の声とでも言いましょうか。清冽に鳴り響くメロディは、本当に美しくてさすがなのです。よくよく聴いていると、トゥッティで弾いているときと、ソロで弾いているとときとでヴィブラートのかけ方とか、変えておられたように見受けられました。最初から、弓が毛羽立ってましたけど。。。
途中、ティンパニも2台がフルで鳴ったり、和音になったりしていて。シンバルもWで鳴ったりして。クラリネットさんは全員楽器を上げてベルアップで吹いていたりして(楽譜にベルアップしろ、って書いてあるんだと思います。ミニスコアは未見なのですが……)
振っている聖響さんも、最初からもの凄い集中力で振っておられて。第1楽章から、お声が聞こえてきました。
この第1楽章だけで、演奏時間が30分を越えるんですよね。でも、指揮者&オケにかぶりつきの席で聴いていて、シンクロして集中していたためなのか。あっと言う間に終わってしまったような気がします。第1楽章が終わった後、この楽章の展開や演奏があまりに楽しくて凄くて、笑いが止まらなくなってしまって。最初から、超ハイテンションでした。
第2楽章はテンポ・ディ・メヌエット きわめて穏やかに。
圧巻としか言いようのない、最初から大爆演だった第1楽章から一転して、穏やかで美しいメロディが流れます。
ここでも、石田氏の美しいソロは健在で。加えて、ヴァイオリンが第1も第2も、かなり細かくパートが分かれているようでした。ゲネプロの時は遠くから聴いていたので、あまりよくわからなかったんですけど。本番で、近くで聴いてみて、凄く細かくパートが分かれていることに気づきました。
例えば、アウトサイド(客席に近い方に座っている人たち)だけで弾いたり。首席奏者さんだけが別のパートを弾いたり。
今日はヴァイオリンが対向配置になっていたので、第1→第2へのメロディの受け渡しがステレオ効果で聞こえてきたり。
そういう、ヴァイオリン部隊の皆さんを見ているだけでも、かなり楽しめました。
そしてこの楽章の石田氏のソロ。GPの際に、聖響さんも絶賛してましたが、本当に素晴らしかったです。
第3楽章はコモド・スケルツァンド 急がずに。
この楽章では、ステージに登場しないけれどとても重要な役割を担っている、ポストホルンさんが大活躍でした。
楽譜にも、そのポストホルンさんは「はるかかなたから聞こえてくるように」と書き込まれているようでして。2階の上手側のステージ裏、隅の所に扉があって、その扉を開けて奥から妙なる調べが聞こえてきました。
GPでは聖響さんから「ちょっと今日は音が低めに聞こえます」なんて指摘も飛んでましたけど。。。バルブやピストンがないために唇で音をコントロールしなければならない楽器なので、音程を取るのが大変そうだなぁ、と。聞きながら「ポストホルンさん、頑張って!」と心の中で応援してました。
この楽章でも、ヴァイオリン部隊はそれぞれ細かくパートが分かれてました。スコアを見たら、多分第1も第2も、ヴァイオリンが2~3段に分けて書かれているんではないかと思われます。インとアウトだけじゃなくて、指揮者に近い方と遠い方とか、いろんな分け方をしているようでしたから。。。
そして、第2楽章以降はとてもメルヒェンな曲が展開しているように聞こえました。そう、「メルヘン」じゃなくて「メルヒェン」と言っちゃうような、微妙な感覚の違いがくっきりと浮かび上がってくる感じだなぁ、と。
第4楽章はきわめて穏やかに、神秘的に、常にpppで。
ここで、ついに波田野さんのメゾ・ソプラノによる独唱が登場します。静かに演奏されるこの楽章で響く、波田野さんの歌声が!!!
とても素晴らしくて、最初に聞こえてきたお声だけで、涙腺直撃されてしまいました。GPでも、聴いた瞬間に泣きそうになったんですが。本番では本当に泣いてしまいました。
また、この楽章。どこかで聴いたことが……と思ったんですが。そのまま交響曲第4番につながっていく世界があるように感じました。一瞬、そのまま第4番が始まるの!?と思ったほど(笑)
そして第5楽章は快活なテンポで、大胆な表出で。
ここでいよいよ、女声合唱&少年少女合唱団の登場です。チャイムの音と一緒に、ステージの後上方から少年少女合唱団の音が聞こえてきて、「ああ、天使様だわ♪」と思わずニッコリ(実際、GPでは普通に皆さんブレザーだったんですが、本番では天使様の衣装でした)
波田野さんの独唱も加わって、オケの皆様はちょっとお休みな感じだったんですけど。途中、オケの音が止んで合唱のみになる部分もありまして、とても綺麗な響きが聞こえてきました。
ラストは第6楽章 ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情をこめて。
愛による神の救済が描かれているらしいこの終楽章が、とてつもなく素晴らしかった!!
冒頭の、神奈川フィルの弦の美しさをこれでもか!と言わんばかりに見せつけてくださるような美しくて柔らかい音色がっ!!!
聴いていてとても幸せで、ポロポロ泣けてきてしまいました。
プログラムによれば、救済の理念を音にした曲だということなんですけど。神奈川フィルの弦の音で再現されたこの楽章は、原罪を背負って生まれ、年を経ていくごとに神の道から離れて罪を重ねていく自分が、魂ごと救われるような心地になります。私、天台宗ですのに(苦笑)
途中で高まっていく音に飲み込まれて、かと思えば羽毛のように柔らかくて優しい音が降り注ぐ。
緩急の付け方は、いつもながら見事としか言いようがありません、聖響さん。
テンポを揺らすわけでもない、微妙な間を取るわけでもない。なのに凄くメリハリがついていて、聴いていてワクワクしてしまうんですよね。
どうしようもなく美しくて、魂ごと揺さぶられて。
泣けて泣けて、仕方なくて。
この場にいて、この音楽に全身を包まれる感覚を体感できて、とてもとても幸せでした。
曲に完全に集中している聖響さんの声も聞こえてきて。
最後のコーダは本当に圧巻!としか言いようがなくて。
曲が終わってしまうのが凄くもったいないと言うか、終わってほしくないと心から思いました。
音が鳴り止んでからも、少しの間拍手できませんでしたもの。
聖響さんの手が完全に降りきっていなかったから、というのも理由の一つだったんですが。すぐに拍手してしまうのがもったいなくて、余韻に浸っていたかったのと。涙を拭う時間が欲しかったのと、両方の理由で(笑)
この第3番はコンマスさんをはじめとする弦楽器のソロも多かったので、神奈川フィルが誇る素晴らしき弦の首席奏者さんたちの音色も、それぞれ満喫することができました♪
年明けのミサソレの時から「今年はマーラーなんで、よろしく」と言っていた聖響さん(まだ2月、3月の定期演奏会が残ってるのにね;)
マーラー大好きな指揮者さんが、ついに「うちのオケ」と言えるオーケストラでマーラーを振るのだから、やりたいことを全部やってくるだろう、と思って期待していたのですが。
期待以上と言いましょうか、予想を遙かに凌駕する、とんでもなく凄すぎて楽しすぎました。
聴きながら、
「マーラーってスゴいっ!!! 凄すぎて、楽しすぎるっ!!!」
と心が叫んでおりました。
音量差もかなり激しいですし、ホールのあちこちから音が聴こえてくるし。
つくづく、CDで聴くには向かない=生で聴くのが一番!な作曲家だと思います。
あの場にいて、直にあの演奏に接することができて、本当に幸せでした。
出演された皆様方に、心から感謝申し上げます。
<以下、聖響さんファン的視点な余談>
今日は、せっかく岡山から出ていくんだから、フルで楽しまなきゃ♪
というわけで、GPから拝見しました。
あの本番を聴いて、GPから2回聴いて大正解だったな、と思いました。終演後に友人とも話していたんですが、あのフィナーレを聴いた後、もう1回最初から聴かせて欲しい!という気持ちになりましたもの(オケの方からすれば、なんてドSな発言!?かもしれませんが;)
音楽は一期一会。だからこそ、その時にしか聞けない演奏が貴重であり、その場に居合わせることができる幸せを噛みしめるわけなのでありますが。今日のアレは、何度でも味わいたいです。……と言っても、CDではあの緊張感漂う空気とか、迫力とか、半減以下になっちゃうんでしょうけど。。。
GPでは、最初は最近よく着ておられるグレーの長袖パーカー姿で振っておられた聖響さんでしたが、第2楽章に入る頃には体が温まったのか、パーカーを脱いで半袖Tシャツ姿で振っておられました。
前置きでも書きましたが、GPから「これは相当ヤバいレベルで凄い演奏が聴けそうだ」と思ったのですが。
本番での聖響さんの集中力は、やはりとんでもなく凄くて。第1楽章からずーっと歌ってました。
あそこまで集中して振っておられる姿を拝見するのは、本当に久しぶりと言いますか。年末の第九、大阪での2日目の時もこんな感じだったなぁ、と思いました。曲が終わった後、やりきった!という感じの表情をしておられましたので。
そして、下から聖響さんの後ろ姿を見上げるのも、本当に久しぶりでして。しかも結構近い距離からだったということと、もの凄く集中しておられたということが重なって、初めて彼のコンサートを聴きに行った時のことを思い出しました。
加古川のアラベスクホールで演奏された、「田園」
あの最終楽章の、天から降りてくる光のような美しくてキラキラした音と、それを演出した聖響さんの手がスローモーションのように飛び込んできて、どうしようもなく泣けてきたあの感覚。天から「降りてきた」ような感覚を、今日のマーラーでも味わいました。
1月のミサソレとはまた違った意味で、とてつもなく凄すぎる演奏を聴かせていただきました。
こういう演奏を聴かされるから、いつそれが聴けるかわからないから、やめられないんですよねぇ。聖響さんの追っかけを(笑)
GPを聴いて「ああ、これは。今日の本番では絶対に泣かされるな」と予想はしてましたけど。
予想以上でした。
また、終演後のカテコにて。
自分一人で拍手を受けるのではなくて、オケの皆さんを立たせようとする聖響さんに対して。次席奏者さんと示し合わせて「立て、って言われても立たないから!」と言わんばかりに、聖響さんを指揮台に立たせて拍手を一身に受けるようにし向けたスーパー・コンマス石田さんにもブラボーでした♪
ブラームス、ベートーヴェンはフル・コンプリートしたから。次はマーラーね!
と横浜まで追っかけてきましたけど。
N響デビューで振った1番から順番に、大フィルさんとの2番と聴いてきて。3番まできて、やっと聖響さんが本当にやりたいと思っていたであろうマーラーを聴くことができたような気がします。
今日から始まった、マーラーがっつり定期。まずは前半、スタンプを5つ集めて、来月の「復活」CDをGetしたいと思います。
ああ、楽しみですわ♪
来月の「復活」(^^)
ですが、食わず嫌いな作曲家がおりました。
それが。
グスタフ・マーラー
マーラーと言えば、交響曲がやたら長くて途中で退屈しちゃうし、音量の差が激しすぎてCDで聴くには向かないし。
なんか、イヤ。
ということで、ずっと敬遠してきたんです。それこそ、数年ではきかないほどの長い間。
でも数年前、ちょっとしたきっかけで「あら、面白そう」と興味を持って聴いてみたら、これが意外に面白くて。
凄いじゃん、マーラー!
と印象が一変した数ヶ月後でした。
金聖響さんのファンになったのは(笑)
というワケで、前置きが長くなりましたが、2010年~2011年。マーラーの生誕150年と没後100年が立て続けにやってくるマーラー・イヤーの2年間。聖響さんと神奈川フィルが「マーラーがっつり定期演奏会」をやる、ということで聴いてきました。
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神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第262回定期演奏会
マーラー作曲:交響曲第3番 二短調
指揮:金聖響
メゾ・ソプラノ:波田野睦美
合唱:神奈川フィル合唱団
合唱団音楽監督:近藤政伸
児童合唱:小田原少年少女合唱隊
代表・指揮:桑原妙子
ソロ・コンサートマスター:石田泰尚
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
みなとみらいホール 大ホール 19:00~
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昨年、神奈川フィルさんから2010年度の定期演奏会のご案内をいただいた時から、どんな演奏になるんだろう?と楽しみにしておりました。
そして今年は定期会員になったので(フェイバリット会員なので、5回限定ですけど。……その5回が全て聖響さん指揮なのは、もちろんお約束です;)、ゲネプロ見学の権利を得たわけでありまして。当然、行使致しました♪
ゲネプロなので、途中で飛ばしつつ、気になるところは繰り返しつつ、指示を出しつつ……という感じだったのですが。
そのゲネプロを聴いたときから、かなりヤバかったんですよ。
今にも泣きそうになってて(笑)
これを、高い集中力を持って本気モードで演奏する本番で聴いたら、とんでもなく凄いことになるんじゃないか、と。
で、その本番が。。。
本気でヤバかったです(笑)
今日の定期演奏会は、プレトークなし。
いきなりの本番でした。
聖響さんはやはり、燕尾服でのご登場。そして、大好きな大河ドラマの福山龍馬を意識して伸ばしておられるのか、2月に拝見した時から更に髪が伸びてました。
このマーラーの第3番は、かなり大がかりな編成になっております。
ティンパニも2セット、シンバルも2組で打楽器がズラリ。舞台裏にもポストホルンさんや打楽器さんが待機。メゾ・ソプラノさんに女声の合唱団に、途中から少年少女合唱団も加わって、オケも大編成。
あっちからもこっちからも音が聞こえてくるので、マーラーを聴くときはステージ裏じゃなくて1階席で聴くべきだろう、と思いましたので、久しぶりに(←…;)1階席に降りました。それでも、取れた席が結構前の方でド真ん中だったもので、指揮者&オケにかぶりつき(笑) 久しぶりに聖響さんの後ろ姿を下から見上げました。
で、まずは第1楽章 力強く、決然と。
プログラムによれば「岩山が私に語ること。牧神の目覚め」ということで、冒頭から牧神パーンを呼び覚ますホルンの音が鳴り響きます。8本のホルンが同時に同じ旋律を吹く、というだけでもかなり迫力があります。
かと思えば、いきなりバスドラムが1台だけ、客席で少しでも物音が立てば音がかき消されてしまうほどの小さな音でリズムを刻む、何とも言えない張りつめた空気が漂って、低音が不穏な空気を漂わせて……と、目まぐるしく曲が展開していきます。
そして流れてくる、トロンボーンの美しいメロディ。運命の動機を思わせる音形が続く中で鳴り響くメロディは、プログラム的に言えばパーンが葦笛で奏でるメロディなのかもしれませんが。聴いていると、抗いようのない厳しい運命に立ち向かう人に向けて、強さを合わせ持った優しさで語りかけるようにも聞こえました。
そして、この楽章からすでに炸裂する石田氏のソロの音色は、さながら天の声とでも言いましょうか。清冽に鳴り響くメロディは、本当に美しくてさすがなのです。よくよく聴いていると、トゥッティで弾いているときと、ソロで弾いているとときとでヴィブラートのかけ方とか、変えておられたように見受けられました。最初から、弓が毛羽立ってましたけど。。。
途中、ティンパニも2台がフルで鳴ったり、和音になったりしていて。シンバルもWで鳴ったりして。クラリネットさんは全員楽器を上げてベルアップで吹いていたりして(楽譜にベルアップしろ、って書いてあるんだと思います。ミニスコアは未見なのですが……)
振っている聖響さんも、最初からもの凄い集中力で振っておられて。第1楽章から、お声が聞こえてきました。
この第1楽章だけで、演奏時間が30分を越えるんですよね。でも、指揮者&オケにかぶりつきの席で聴いていて、シンクロして集中していたためなのか。あっと言う間に終わってしまったような気がします。第1楽章が終わった後、この楽章の展開や演奏があまりに楽しくて凄くて、笑いが止まらなくなってしまって。最初から、超ハイテンションでした。
第2楽章はテンポ・ディ・メヌエット きわめて穏やかに。
圧巻としか言いようのない、最初から大爆演だった第1楽章から一転して、穏やかで美しいメロディが流れます。
ここでも、石田氏の美しいソロは健在で。加えて、ヴァイオリンが第1も第2も、かなり細かくパートが分かれているようでした。ゲネプロの時は遠くから聴いていたので、あまりよくわからなかったんですけど。本番で、近くで聴いてみて、凄く細かくパートが分かれていることに気づきました。
例えば、アウトサイド(客席に近い方に座っている人たち)だけで弾いたり。首席奏者さんだけが別のパートを弾いたり。
今日はヴァイオリンが対向配置になっていたので、第1→第2へのメロディの受け渡しがステレオ効果で聞こえてきたり。
そういう、ヴァイオリン部隊の皆さんを見ているだけでも、かなり楽しめました。
そしてこの楽章の石田氏のソロ。GPの際に、聖響さんも絶賛してましたが、本当に素晴らしかったです。
第3楽章はコモド・スケルツァンド 急がずに。
この楽章では、ステージに登場しないけれどとても重要な役割を担っている、ポストホルンさんが大活躍でした。
楽譜にも、そのポストホルンさんは「はるかかなたから聞こえてくるように」と書き込まれているようでして。2階の上手側のステージ裏、隅の所に扉があって、その扉を開けて奥から妙なる調べが聞こえてきました。
GPでは聖響さんから「ちょっと今日は音が低めに聞こえます」なんて指摘も飛んでましたけど。。。バルブやピストンがないために唇で音をコントロールしなければならない楽器なので、音程を取るのが大変そうだなぁ、と。聞きながら「ポストホルンさん、頑張って!」と心の中で応援してました。
この楽章でも、ヴァイオリン部隊はそれぞれ細かくパートが分かれてました。スコアを見たら、多分第1も第2も、ヴァイオリンが2~3段に分けて書かれているんではないかと思われます。インとアウトだけじゃなくて、指揮者に近い方と遠い方とか、いろんな分け方をしているようでしたから。。。
そして、第2楽章以降はとてもメルヒェンな曲が展開しているように聞こえました。そう、「メルヘン」じゃなくて「メルヒェン」と言っちゃうような、微妙な感覚の違いがくっきりと浮かび上がってくる感じだなぁ、と。
第4楽章はきわめて穏やかに、神秘的に、常にpppで。
ここで、ついに波田野さんのメゾ・ソプラノによる独唱が登場します。静かに演奏されるこの楽章で響く、波田野さんの歌声が!!!
とても素晴らしくて、最初に聞こえてきたお声だけで、涙腺直撃されてしまいました。GPでも、聴いた瞬間に泣きそうになったんですが。本番では本当に泣いてしまいました。
また、この楽章。どこかで聴いたことが……と思ったんですが。そのまま交響曲第4番につながっていく世界があるように感じました。一瞬、そのまま第4番が始まるの!?と思ったほど(笑)
そして第5楽章は快活なテンポで、大胆な表出で。
ここでいよいよ、女声合唱&少年少女合唱団の登場です。チャイムの音と一緒に、ステージの後上方から少年少女合唱団の音が聞こえてきて、「ああ、天使様だわ♪」と思わずニッコリ(実際、GPでは普通に皆さんブレザーだったんですが、本番では天使様の衣装でした)
波田野さんの独唱も加わって、オケの皆様はちょっとお休みな感じだったんですけど。途中、オケの音が止んで合唱のみになる部分もありまして、とても綺麗な響きが聞こえてきました。
ラストは第6楽章 ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情をこめて。
愛による神の救済が描かれているらしいこの終楽章が、とてつもなく素晴らしかった!!
冒頭の、神奈川フィルの弦の美しさをこれでもか!と言わんばかりに見せつけてくださるような美しくて柔らかい音色がっ!!!
聴いていてとても幸せで、ポロポロ泣けてきてしまいました。
プログラムによれば、救済の理念を音にした曲だということなんですけど。神奈川フィルの弦の音で再現されたこの楽章は、原罪を背負って生まれ、年を経ていくごとに神の道から離れて罪を重ねていく自分が、魂ごと救われるような心地になります。私、天台宗ですのに(苦笑)
途中で高まっていく音に飲み込まれて、かと思えば羽毛のように柔らかくて優しい音が降り注ぐ。
緩急の付け方は、いつもながら見事としか言いようがありません、聖響さん。
テンポを揺らすわけでもない、微妙な間を取るわけでもない。なのに凄くメリハリがついていて、聴いていてワクワクしてしまうんですよね。
どうしようもなく美しくて、魂ごと揺さぶられて。
泣けて泣けて、仕方なくて。
この場にいて、この音楽に全身を包まれる感覚を体感できて、とてもとても幸せでした。
曲に完全に集中している聖響さんの声も聞こえてきて。
最後のコーダは本当に圧巻!としか言いようがなくて。
曲が終わってしまうのが凄くもったいないと言うか、終わってほしくないと心から思いました。
音が鳴り止んでからも、少しの間拍手できませんでしたもの。
聖響さんの手が完全に降りきっていなかったから、というのも理由の一つだったんですが。すぐに拍手してしまうのがもったいなくて、余韻に浸っていたかったのと。涙を拭う時間が欲しかったのと、両方の理由で(笑)
この第3番はコンマスさんをはじめとする弦楽器のソロも多かったので、神奈川フィルが誇る素晴らしき弦の首席奏者さんたちの音色も、それぞれ満喫することができました♪
年明けのミサソレの時から「今年はマーラーなんで、よろしく」と言っていた聖響さん(まだ2月、3月の定期演奏会が残ってるのにね;)
マーラー大好きな指揮者さんが、ついに「うちのオケ」と言えるオーケストラでマーラーを振るのだから、やりたいことを全部やってくるだろう、と思って期待していたのですが。
期待以上と言いましょうか、予想を遙かに凌駕する、とんでもなく凄すぎて楽しすぎました。
聴きながら、
「マーラーってスゴいっ!!! 凄すぎて、楽しすぎるっ!!!」
と心が叫んでおりました。
音量差もかなり激しいですし、ホールのあちこちから音が聴こえてくるし。
つくづく、CDで聴くには向かない=生で聴くのが一番!な作曲家だと思います。
あの場にいて、直にあの演奏に接することができて、本当に幸せでした。
出演された皆様方に、心から感謝申し上げます。
<以下、聖響さんファン的視点な余談>
今日は、せっかく岡山から出ていくんだから、フルで楽しまなきゃ♪
というわけで、GPから拝見しました。
あの本番を聴いて、GPから2回聴いて大正解だったな、と思いました。終演後に友人とも話していたんですが、あのフィナーレを聴いた後、もう1回最初から聴かせて欲しい!という気持ちになりましたもの(オケの方からすれば、なんてドSな発言!?かもしれませんが;)
音楽は一期一会。だからこそ、その時にしか聞けない演奏が貴重であり、その場に居合わせることができる幸せを噛みしめるわけなのでありますが。今日のアレは、何度でも味わいたいです。……と言っても、CDではあの緊張感漂う空気とか、迫力とか、半減以下になっちゃうんでしょうけど。。。
GPでは、最初は最近よく着ておられるグレーの長袖パーカー姿で振っておられた聖響さんでしたが、第2楽章に入る頃には体が温まったのか、パーカーを脱いで半袖Tシャツ姿で振っておられました。
前置きでも書きましたが、GPから「これは相当ヤバいレベルで凄い演奏が聴けそうだ」と思ったのですが。
本番での聖響さんの集中力は、やはりとんでもなく凄くて。第1楽章からずーっと歌ってました。
あそこまで集中して振っておられる姿を拝見するのは、本当に久しぶりと言いますか。年末の第九、大阪での2日目の時もこんな感じだったなぁ、と思いました。曲が終わった後、やりきった!という感じの表情をしておられましたので。
そして、下から聖響さんの後ろ姿を見上げるのも、本当に久しぶりでして。しかも結構近い距離からだったということと、もの凄く集中しておられたということが重なって、初めて彼のコンサートを聴きに行った時のことを思い出しました。
加古川のアラベスクホールで演奏された、「田園」
あの最終楽章の、天から降りてくる光のような美しくてキラキラした音と、それを演出した聖響さんの手がスローモーションのように飛び込んできて、どうしようもなく泣けてきたあの感覚。天から「降りてきた」ような感覚を、今日のマーラーでも味わいました。
1月のミサソレとはまた違った意味で、とてつもなく凄すぎる演奏を聴かせていただきました。
こういう演奏を聴かされるから、いつそれが聴けるかわからないから、やめられないんですよねぇ。聖響さんの追っかけを(笑)
GPを聴いて「ああ、これは。今日の本番では絶対に泣かされるな」と予想はしてましたけど。
予想以上でした。
また、終演後のカテコにて。
自分一人で拍手を受けるのではなくて、オケの皆さんを立たせようとする聖響さんに対して。次席奏者さんと示し合わせて「立て、って言われても立たないから!」と言わんばかりに、聖響さんを指揮台に立たせて拍手を一身に受けるようにし向けたスーパー・コンマス石田さんにもブラボーでした♪
ブラームス、ベートーヴェンはフル・コンプリートしたから。次はマーラーね!
と横浜まで追っかけてきましたけど。
N響デビューで振った1番から順番に、大フィルさんとの2番と聴いてきて。3番まできて、やっと聖響さんが本当にやりたいと思っていたであろうマーラーを聴くことができたような気がします。
今日から始まった、マーラーがっつり定期。まずは前半、スタンプを5つ集めて、来月の「復活」CDをGetしたいと思います。
ああ、楽しみですわ♪
来月の「復活」(^^)
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